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法話
2022/06/20
6月の法話(家庭菜園に因んで)

 私は今、家庭菜園をしています。育てているのはチンゲン菜と万願寺とうがらしです。当初は順調に育っていたのですが、暫くして虫食いが見られるようになりました。虫も生きているのだからと、様子を見ていたのですが、虫食いのスピードが速く、やむを得ずオーガニック栽培用の殺虫剤を購入しました。
 チンゲン菜の方は、虫をすぐに見付けて、退治出来ました。一方、万願寺とうがらしの方は、黒い糞ばかりで虫は見当たりません。しかし、毎日、虫食いは増えていき、糞も葉っぱや根元にたくさん落ちています。おかしいと思いながら、ただ葉っぱが食われていく様子を見るしかありませんでした。
 一週間後、原因が判明しました。日が暮れてから、懐中電灯で様子を見に行くと、全長5~6センチの蛾の幼虫が四匹見つかりました。ここまで成長したのに、申し訳ないと思いましたが、退治することにしました。それからは、虫食いは無くなりましたが、万願寺とうがらしに実がなるかどうか、微妙なところです。
 私は家庭菜園を通して、改めて共存することの難しさを教えて頂きました。虫たちも私たちと同じ命を生きています。けれども、状況によって、その命を奪わざるを得ないことがあります。「人はみな、しかるべき縁がはたらけば、どのような行いもするものである。」と親鸞聖人が仰せになった通りであります。
 また、全ての命は循環していることに気付くことも出来ました。退治した虫たちを土の上に放っておいたのですが、翌日には全て無くなっていました。雀が来ていましたので、恐らく食べたのでしょう。虫の命も無駄にならなかったと思い、安心した次第です。
 私たちは、今、大きな循環の中を生きています。植物の葉っぱを食べた虫を今度は雀が食べます。その雀が死ぬと、細菌に分解され、土に還り、また植物の栄養となります。こうした命の循環があって初めて、バランスが保たれているのです。
 さらに、全ての命は阿弥陀様に願われた平等の命です。その命がまた一つの世界に還ってゆくお念仏に今、出遇っていることを共々に喜んでまいりましょう。称名。【副住職】