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法話
2022/08/20
8月の法話(『ちむどんどん』)

 今、NHKの連続テレビ小説では、『ちむどんどん』が放送されています。因みに「ちむどんどん」とは、心がドキドキ・ワクワクする様子を表しているそうです。その『ちむどんどん』のヒロインは信子と言います。信子の家族は両親と、兄、姉、妹の6人家族でしたが、信子が幼い時に父は亡くなります。一昨日の放送での出来事です。
 信子の兄の名前は賢秀と言います。賢秀は、騙されやすいタイプの人で、大きく儲かりそうな話に乗せられてことごとく失敗してきました。賢秀自身は家族のためと思って、大金を稼ごうとするのですが、それが却って、迷惑をかけてしまう有様です。ようやく養豚の仕事に落ち着くのですが、また、儲かり話に乗せられ、今度は、ねずみ講という犯罪に巻き込まれた上に、違約金として200万円を信子に払ってもらうことになってしまいました。

 その後、賢秀は、ふと昔の記憶を思い出します。
 ある時、賢秀は近くのお店で万引きをしてしまいました。賢秀はお店の人と家族の前に立ちます。お店の人が万引きの状況を説明しますが、賢秀は黙ったままです。しかし、話を聞いた賢秀の父がとっさに土下座をしながら、
「次、賢秀がこんなことしたら、おれが刑務所に入る。すみませんでした。」と謝ります。
すると、賢秀はすぐに言い返します。

賢秀:「あり得ん。お父ちゃんは関係ない。」
父:「家族なのに関係ある。関係ないなんて言うな。二度と言うな。」

父は立ち上がり、お店の人に静かに頭を下げ、そして賢秀を抱きしめて言いました。
「お前は悪くない。悪いことをしたけど、お前は悪い人間じゃない。お前が悪いとしたら、それは父ちゃんのせいさ。」

さらに、父が亡くなる直前の遺言を思い出します。
「賢秀、お母ちゃんとみんなを頼むよ。」

父との記憶を思い出した賢秀は、同じように土下座してみんなの前で謝ります。(みんなでは無く二人なのですが、登場人物が増えるとややこしくなるので便宜上、みんなとします。)
「すまなかった。おれは本当に情けない。信子に幸せになってもらいたかった。母ちゃんに楽になってもらいたかった。ただそれだけなのに。おれは今度こそ心を入れ替えて地道に働く。何年かかっても信子に200万円必ず、必ず倍にして返すから。」
 賢秀は、お父さんの願いに気付いた時、自らをかえりみて、その愚かさを知らされ、心を入れ替えるご縁となりました。阿弥陀様は、私たちの罪悪をもう既に見抜いておられ、全てを引き受けたと常に抱きしめて下さる仏様です。その阿弥陀様が南無阿弥陀仏となって、この身に満ち満ちて下さっています。親鸞聖人の御和讃です。

「十方微塵世界*の 念仏の衆生*をみそなはし 摂取*してすてざれば 阿弥陀となづけたてまつる」

称名。【副住職】

*十方微塵世界:数限りない世界
*衆生:生きとし生けるものすべて
*摂取:摂(おさ)めとる。念仏の行者を光明の中におさめ救いとって決して捨てないこと。