法話
2020/10/10
絵本法話~シビ王のほどこし~
絵本のあらすじ
優しく皆に慕われているシビ王の住むお城に鳩が急いで逃げ込んで来ました。すると、その後すぐに鷹が舞い込んで来ました。鳩は鷹に追われているから助けて欲しいと言い、鷹はお腹が空いて死にそうだから鳩を差し出せと言います。優しいシビ王はどちらも助けたいので考えた末に、自分の肉を削ぎ取り鷹にあげることにしました。
天秤の片側に鳩を乗せ、片側に削ぎ取った自分の肉を置きました。しかし足りません。シビ王は更に自分の肉を削ぎ落とし天秤に乗せましたが、まだ足りません。そこでシビ王は自ら天秤に乗りました。すると、今まで少しも動かなかった天秤が動き、鳩とピッタリと釣り合ったのです。鷹は嬉しそうにシビ王の頭上高くを旋回しました。
シビ王はとても優しい方だったのですね。そして聡明な方でした。この物語に出て来る天秤は重さを量るものではなく、いのちの天秤だったのです。鳩も鷹も人間の王様も、身分や立場など関係なく、どんな種類の生き物もいのちは皆等しく尊いということを教えてくれています。
さて、あなたは今日、または昨日何を食べられましたか?一品ずつ、一食一食しっかり覚えているでしょうか。お味噌汁一つ取ってみても、出汁には鰹やいりこ、昆布が使われています。具にも様々ありますね。また明太子はどうでしょう。一口食べるだけで何千、何万のいのちを絶っているのがこの私です。
私たちはそうした「いのち」をいただかなくては生きていくことが出来ません。お金を払っているから「いただきます」を言わなくていいということではありません。「いのち」をいただくので、せめて食事をとる前に手を合わせて「いただきます」を言うのです。これは「あなたのいのちを私のいのちにかえさせていただきます。勿体無いことです。決していのちを無駄にはしません。有り難うございます。」という気持ちのあらわれなのです。
いつもは「いただきます」と省略しますが、一度
「あなたのいのちを わたしのいのちに かえさせて いただきます」
と言われてみては如何でしょうか。当たり前のように感じている食事が、改めてかけがえのないものと重みを感じ、気づかされるご縁になるかと思います。
「シビ王のほどこし」は、いのちの大切さと同時に、自身が何かを食べては美味しい、美味しくないとつい口から出てしまうどうしようもない私である、と気づかせて下さいました。そのような私には、ただただ手を合わせ感謝することしか出来ません。この絵本から大切なことを学ぶご縁を頂戴しました。
絵本は本願寺出版社から出ている「お釈迦さまのものがたりⅠ」です。このお話の他に三話載っています。大人でも子どもでも、親子でも楽しめて、ハッと気づかされる仏典童話の絵本です。どうぞお手に取って読んでみて下さい。【若坊守】