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法話
2023/06/01
6月の掲示板

失ったものを数える人あり

与えられたものに感謝する人あり

(豊島学由)
 
 私たちにとって「失ったもの」とは何でしょうか。
 それはお金や健康かもしれません。または、大切な友人や親、兄弟、伴侶かもしれません。人それぞれだと思います。

 あるご門徒の方がこんなお話を聞かせて下さいました。
「最近、年を重ねる度に季節の風を感じるようになりました。薫風というそうです。そしてひらひらと飛んでいる蝶を見ると、先に往った妻が還ってきているように感じます。」
 私たちにとって「失ったもの」が大切な存在であるほど、深く心に刻まれることでしょう。しかしながら、「失った」のではなく、「還ってきている」と考えれば、実は失うものは何もないと気付かせて頂きました。
 「与えられたものに感謝する」ということについて、作家の五木寛之さんがある本の中で繰り返し言っておられたことを思い出します。それは、「きょう一日を十分に生ききる」というものでした。その上で、「夜、寝る前に、『きょう一日の命を、ありがとうございました』と、つぶやく習慣がいつのまにかついてしまった。」と書いておられました。
 「与えられたもの」は人によって異なるかもしれません。しかし、私たちに共通しているのは「いま」を生きているということです。それは「与えられた」命があるからです。ですから、「人あり」と他人事のように考えるよりも、「失うものは何もなく、与えられた命に感謝するわれ一人あり」と頂くことが出来ると良いですね。称名。【副住職】