今年の流行語大賞は「アレ(A.R.E)」でした。「アレ(A.R.E)」とは、皆様ご存知の通り、阪神タイガースの岡田彰布監督の口ぐせです。今年は阪神タイガースが38年ぶりに日本一になりました。シーズン中、「優勝」を意識しないように、隠語として、「アレ」とタイガースファンからも口々に叫ばれるようになったようです。
　この一年を振り返ると、明るいニュースと言えば、野球の話題だったように感じます。しかし、その他は暗いニュースばかりだったのではないでしょうか。御堂さん12月号の「如是我聞」にも、そのように書かれていました。

　暗いニュースを聞くと、確かに重たい気持ちになってしまいます。その気持ちとは、不安や恐怖、場合によっては怒りの感情を抱く場合もあるでしょう。しかしながら、ニュースとは飽くまで画面上の出来事であり、本当の実態は分からないということです。こんなたとえ話があります。

　ある人が夜道を歩いていると、蛇（と思い込んでいる）に遭遇し、慌てて家に帰りました。ところが、あの蛇が家の中に入ってきたらどうしようと不安で仕方がありません。翌朝、同じ場所に戻ってよく見てみると、それはただの縄の塊でした。そしてその縄をさらによく見てみると、麻で編まれていたのです。

　このたとえ話は「蛇縄麻（じゃじょうま）の喩え」と呼ばれていますが、今の私たちの様子をよく表していると思います。もし、不安や恐怖を感じるならば、その気持ちに実体はあるのか自分に聞いてみる必要があります。蛇と思っていたものが麻で出来た縄にすぎないと気が付くことが出来れば、無闇に恐れることも無くなります。それには、感覚（心）で情報を受け取る習慣を身に付けると良いと思います。

　普段、私たちは感覚（心）を軽視し、概念に振り回わせれてはいないでしょうか。しかし、スポーツでも料理でも、最終的に感覚で決まることはよく知られています。一度、感覚（心）でテレビなどを見てみてください。何か違和感を感じることがあるはずです。後は、レッテルを貼ったり、二元論で物事を判断しないことが大切です。
　今年一年間を振り返ってみると、「アレ？何かおかしい」と感じている人も多いように思います。それは内閣不支持率の高さにも表れています。
　私たちは、今、概念を離れ、感覚（心）で感じる時が来ているのではないでしょうか。今年は「アレ(A.R.E)」に湧いた一方で、「アレ？何かおかしい」と感じる一年でありました。称名。【副住職】