法話
2025/06/10
絵本法話〜世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ〜
《あらすじ》
2012年、ブラジルのリオデジャネイロで、環境が悪化した地球の未来について話し合う国際会議が開かれました。その会議で、南米の国ウルグアイのムヒカ大統領が演説した内容をそのまま絵本にしたものです。ムヒカ大統領は給料の大半を貧しい人のために寄付し、大統領の公邸に住まず、農場に暮し、古びた車を自分で運転して、大統領の仕事に向かう世界でいちばん貧しい大統領です。その演説に大きな拍手が起こりました。人の生き方そのものを考え改めなければ、地球の未来は考えられない、物をもっと多く手に入れるため命そのものを削るような生き方でいいのかと問いかけています。古代の賢人エピクロスやセネカ、アイマラ民族の言った「貧乏とは、少ししか持っていないことではなく、かぎりなく多くを必要とし、もっともっととほしがることである」ということばが、演説の趣旨を語っています。
先月、世界でいちばん貧しい大統領と言われたウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領がお亡くなりになりました。改めてどんな方だったのか、絵本がありました。
ムヒカ元大統領は身なりにかまわず、収入の大半を貧しい人のために寄付し、大統領の公邸には住まず、農場で奥さんと暮らし、花や野菜を作り、運転手もつけず、古びた愛車で出勤する人でした。
そんな人がスピーチした中にあった言葉は、
「貧乏とは少ししか持っていないことではなく、無限に欲があり、いくらあっても満足しないことです」
でした。
この会議で皆さんの心に最も刺さった言葉だったのではないでしょうか。SDGsをと掲げられていますがこの言葉に限るような気がします。便利と引き換えに自然を汚し好き放題し、意にそぐわなければ戦争をおこし人の命までも奪うわたしたちです。
「仏説無量寿経」というお経の中には「少欲知足」と説かれています。少ない欲で足るを知る。便利になるとそれに慣れてもっともっととなりますが、一歩立ち止まって考える時に来ています。それを改めて教えてくれたホセ・ムヒカ元大統領です。アクセルを踏み続けるだけではしんどくなります。運転でもブレーキは必ず必要で、そのブレーキの役目はこころの拠りどころとなる宗教なのではないでしょうか。
『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』
編/くさばよしみ
絵/中川学
発行所/株式会社汐文社
人類の幸福とは何か、深く問いかける絵本になっています。是非手に取って読んで欲しい一冊です。【若坊守】