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法話
2020/12/20
12月の法話(年末の大掃除に因んで)

 年末の大掃除。私たちは毎年、一年間に溜まった塵(ちり)や垢(あか)を取り除き、新年を迎える準備をします。ところで掃除と言えば、御釈迦様のお弟子「周利槃特(チューラパンタカ)」の有名な説話があります。

 ある時、チューラパンタカはお兄様の勧めにより出家します。お兄様は御釈迦様のお弟子の中でも、大変聡明で他のお弟子さん達からも敬われるような方でした。お兄様はチューラパンタカに仏教の戒律を授け、仏教の教えをまとめた短い詩を覚えるように言います。ところが、チューラパンタカは3ヶ月経ってもその詩を覚えることができません。一人で悩んでいると、周りのお弟子さんがもう一度お兄様から教えを聞くように促します。チューラパンタカは、初めのうちは気後れしていましたが、ようやくお兄様のところに行って悩みを打ち明けます。しかし、お兄様はチューラパンタカのあまりの愚かさに落胆し、還俗して、両親に孝行するように厳しく諭しました。チューラパンタカはお兄様のあまりの厳しい言葉にショックを受けて一人で泣いていると、そこに御釈迦様がやって来られます。

「チューラパンタカよ。何故一人で泣いておるのか?」

「御釈迦様、私は本当に愚かで、智慧もありません。私のようなものは仏教教団には必要ないのでしょうか?」

「そんなことはない。私のもとで改めて、仏教の教えを学んでみないか?」

「でも私はとても愚かな人間です。御釈迦様のような偉大な先生のもとで学ぶことなど、とんでもないことです。」

「自分を愚か者と自覚している者は賢者と言う。そして自分を賢者だと思っている者こそ本当の愚か者と言うのですよ。あなたには、塵を除こう、垢を除こう、この言葉を授けます。」

そして御釈迦様はこの言葉と共に掃除をするようにチューラパンタカに勧められました。そうしてチューラパンタカは、ひたすら、「塵を除こう、垢を除こう」と繰り返しながら、毎日毎日、掃除に励み、やがて覚りに至ったというお話です。
 
親鸞聖人の御消息(ごしょうそく)に次のお言葉があります。

今は亡き法然上人が、「浄土の教えを仰ぐ人は、わが身の愚かさに気付いて往生するのである」と仰せになっていたのを確かにお聞きしました(『親鸞聖人御消息(現代語版)』61頁)

 チューラパンタカは、自らの愚かさに気付いて、怠らず、毎日掃除を続けました。愚かさに気付くことは私たちには受け入れ難いことかもしれません。しかしながら浄土のみ教えを仰ぐことによって、その愚かさに気付かされていきます。私自身もチューラパンタカの説話を思い出しつつ、年末の掃除に励むことにしたいと思います。称名。【副住職】