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法話
2021/03/01
3月の法話

満開の桜の下 きれいだねと 見上げる私

ふみつけた そのクツの下にも 同じいのちが

(真宗仏光寺派掲示伝道より)

 満開の桜を愛でるのは、日本人特有の伝統文化です。起源は奈良時代に遡るそうです。当時は中国から伝来した梅を貴族の間で鑑賞されていたようで、桜に代わったのは平安時代とのことです。古来より私たち日本人は桜を愛でてきました。理由は分かりませんが、桜は二週間ほどで散りますので、そこに無常を感じているのかもしれません。日本人の心として大切にしていきたいと思うのですが、桜を見上げている時にも多くのいのちをふみつけていることには意識が及ばないことだろうと思います。
 仏教教団では、御釈迦様のおられる時代から「安居(あんご)」という行事があります。インドの雨季にあたる4月16日から7月15日に至る90日間に限り、遊行を止め、一定の場所に住して専ら、修練につとめます。その理由は、雨季になると、土の中にいた虫たちが地上に出てきて活動するようになり、虫たちを踏み殺してしまう恐れがあるためです。御釈迦様は、土の中でうごめく虫たちに対しても、慈しみの心で私たちと同じ一つの命とご覧になられました。仏教において、地球上に生きている命は全て平等です。それぞれの境涯で、縁があって、命を恵まれたのです。その命にレッテルを貼って、「きれいだね」や「みにくいね」と分別しているのは私の心です。今一度、御釈迦様のお言葉を頂かねばならないと思います。称名。【副住職】

「すべての者は暴力におびえる。すべての(いきもの)にとって生命は愛おしい。己の身にひきくらべて、殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ。」(釈尊『ダンマパダ』中村元訳)