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古文書
2020/11/01
藤野田村記載宗門人別送り状(その③)

江戸時代へタイムスリップ

原文

      宗旨送り一札
一江州高嶋郡西田村百姓甚助娘津祢壱人
 此者勝手ニ付此度摂州西成郡藤野田村
 米屋磯兵衛貸家吉野屋辰蔵方へ引越申度義
 願出候ニ付任其意宗旨送り差遣し申候此者
 宗旨者代々法花宗ニ而當寺旦那ニ紛無御座候
 尤邪宗門轉之者ニ而も無御座候間向後貴寺
 旦那ニ御加入被成候此方宗門帳相除キ可申候
 為後日之宗旨送り一札仍而如件
  弘化四年未二月    江州西田村
                寶泉寺
   摂州藤野田村
    圓満寺御納所

書き下し文

       宗旨送り一札
一江州高嶋郡西田村百姓甚助娘つね壱人
 この者勝手ニ付、この度摂州西成郡藤野田村
 米屋磯兵衛貸家吉野屋辰蔵方へ引越申したく義
 願い出候ニ付、其意に任せ宗旨送り差遣し申し候、この者
 宗旨は代々法花宗ニて當寺旦那ニ紛れ無く御座候、
 もっとも邪宗門轉の者ニても御座無く候間、向後貴寺
 旦那ニ御加入成され候、この方宗門帳相除き申すべく候
 後日の為宗旨送り一札、よって件の如し
  弘化四年未二月     江州西田村
                寶泉寺
   摂州藤野田村
    圓満寺御納所

解説

弘化四年(1847)二月に江州高嶋郡西田村(現・滋賀県高島市)の法華宗・寶泉寺檀家の百姓甚助の娘つねが拙寺檀家で、藤野田村居住の吉野屋辰蔵方へ引っ越しする際に送付された人別状です。
「邪宗門轉の者」とは、邪宗門とは人を惑わすような宗教のことで、この時代はキリスト教を指すと考えられます。轉(ころび)とは、キリスト教から改宗した者のことです。
「邪宗門轉の者ニても御座無く候」とは、人を惑わすような宗教やキリスト教の改宗者ではありませんということです。江戸時代キリスト教は禁教であり、宗門改めによっていずれかの寺院の檀家になることを義務づけられていました。
邪宗やキリスト教の信者ではないという意味でこのような表現がされているのです。